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 魔法のない世界にいる私達は、魔法を使う事を夢に見る。
 それは叶わない事だから。
 では魔法のある世界にいる魔法使い達は何を夢に見るのだろう。

 魔法を使えれば非常に便利である事は確かだ。
 空を飛んだり、空間転位をしてみたり、鍵無しで鍵のかかったドアを開いたり。
 しかし彼等にとっては便利であるとは言えない。当たり前のことだから。
 魔法のある世界では当然、魔力を中心にした技術が発達する。
 対魔法技術も自ずと生まれる。
 魔法のある世界である故に存在する、厄介な事柄もある。

 それが大自然の“大いなる魔法”。

 うっかり足を踏み入れたが最後、二度と出られない迷いの森。
 いきなり地面が跳ね上がる荒野。
 下を通れば必ず発生する大雪崩。
 被害も与えれば恵みも与える、いいのか悪いのか分からない大河の氾濫。
 そして何よりも、人々の築き上げたもの全てを奪い尽くす“大災厄”。

 誰の意志なのかは誰にも分からない。
 しかしそれがどれだけの威力を秘めているものかは皆良く知っている。

 いつも人々は思う。
 この災厄さえ無くなれば人は何にもおびえる事なく暮らしてゆけるのに。
 そして人々は夢見る。
 この“大いなる魔法”を操れるようになればいいのに。

 “大いなる魔法”を制御できればそれはどれだけ素晴らしい事だろうか。
 もう人類が大災厄におびえる必要はなくなるだろう。
 守ろうと思った人々全てを守る事ができるだろう。
 憎いと思った人間は全てこの世から抹殺できるだろう。
 この世界全てを自分の物にできるだろう。

 そしてその夢は人々を“大いなる魔法”へ駆り立てた。
 “大いなる魔法”のことならば全て理解しようと努力した。
 それを手に入れる可能性が出れば争い、奪い合った。
 大規模な戦が起こり、皮肉にも彼等が守ろうとした人々を犠牲にして戦いは続いた。

 その愚かさに、醜さに人々は気付いていた。
 しかし人々は敢えて止めなかった。
 その夢はそうまでしても、叶えて価値あるものなのだから。
 だが“大いなる魔法”の所有者は、いつまでもその夢は見せておかない。
 一つの夢の終わりはいつも挫折、そして“大災厄”だった。

 それは何度も、何度も繰り替えされた。まるで永遠に続いていくかのように。
 しかし永遠に続くものなどあり得ない。いつかは終わりがやってくる。
 しかも唐突に、世界を求め、“大いなる魔法”を望む人々の誰もが望まない形で。

 これは、そんな物語だ。

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